パソコンはまだ売っていますかね

 朝6時に絶叫しながら飛び起きた。マジかよ。寝たのは3時ごろじゃなかったか。確かに普段から絶叫しながら飛び起きているが、しかしこんなにも質の悪い目覚めは初めてだ。気持ち悪い。心臓がヤバい音を立てている。

 ということが今朝に――というかもう昨日の朝になってしまったが――あって、あまりにも衝撃的な(そして不愉快な)夢だったので忘れないうちに書き留めておくことにする。

 

 電車の中。あの、たいへん不快な息苦しさはたぶん、大阪市営地下鉄だろうと思う。僕は赤い座席に座っていて、左側には男が、右側には女が座っているのを視界の端で確認していた。男のほうは、大抵の成人男性がそうであるように、僕より体格が良いらしい。少し汚れたセンスのない服を着ている。女は中年だ。姿を見なくとも、なんとなく「あまり関わりたくないタイプのババア」であることがわかった。僕はあまり関わりたくないタイプのババアが嫌いだ。あまり関わりたくない。

 しばらく不審な挙動をしていると、隣の男が声をかけてきた。

「パソコンはまだ売っていますかね」

 ――その異様な発音と抑揚に驚き、視線を左へちらりと移すと、そこにはこの世のものとは思えぬ異形の姿があった! 吐き気を催す極めて不安定なパーツの配置、醜く落ち窪んだ眼、そして強く憎悪を掻き立てるそのみすぼらしい表情! ああ、なんということだ! ここまでに悍ましい生き物が、忌むべき存在が、ここに在ることを許されているとでも言うのだろうか? 彼の冒涜的なフォルムを受け入れられる人間が世界にどれほどいるのだろうか。だがこの車両内でこの男に対しある種の感情を覚えている者は、驚くべきことに、ただのひとりもいないのである。僕は一瞬にして嘔吐寸前のところまでダメージを受けたが、いや、ここは公共交通機関だ、と懸命に耐え、男のほうを見ないようにした。

「パソコンはまだ売っていますかね」

 また男が話しかけてきた。パソコンなんてそこらの電気店で売っているだろう。こいつは何を聞いているんだ? くらくらしながら横目で彼を見ると、その手には2丁の拳銃が握られていた。更に左隣の空席にも、拳銃が1丁あった。頭をゆらりゆらりと一定の周期で揺らしながら、異形の男は引き金をカチャカチャと触っていた。僕は咄嗟に大声を出し、男の手から拳銃を

 

 いや、こう文字に起こしてみると、なかなかこの気持ち悪さは伝わらないな。

微分方程式メモ (4)

今回のテーマは積分定数だったが理解があまりにも不足しているので冪級数展開による解について書く。

 {\displaystyle f(x,y)}が複素変数 {\displaystyle x} {\displaystyle y}についての複素数函数である場合の微分方程式 {\displaystyle \frac{ dy}{dx}=f(x,y)}について考えよう。 {\displaystyle f(x,y)}は以下の条件に従うとする。
条件1':函数 {\displaystyle f(x,y)} {\displaystyle |x-x_0|<a'} {\displaystyle |y-y_0|<b'}で与えられる複素平面の領域 {\displaystyle D'}において {\displaystyle (x-x_0)} {\displaystyle (y-y_0)}で収束冪級数に展開できる。つまり、 {\displaystyle f(x,y)} {\displaystyle D'}で正則である。
この条件から、 {\displaystyle D'}内で {\displaystyle \frac{ ∂f(x,y)}{∂y }}もまた正則であることがわかる。複素閉領域 {\displaystyle D} {\displaystyle |x-x_0|≦a} {\displaystyle |y-y_0|≦b}  {\displaystyle (0<a<a',0<b<b')}で定めると、 {\displaystyle \frac{ ∂f(x,y)}{∂y }} {\displaystyle D}で連続であるから、 {\displaystyle \left|\frac{ ∂f(x,y)}{∂y }\right|} {\displaystyle D}で連続である。同様に {\displaystyle |f(x,y)|} {\displaystyle D}で連続。有界閉集合上で連続なので、正数 {\displaystyle M} {\displaystyle K}が存在して
 {\displaystyle sup_{(x,y)∈D}|f(x,y)|=M<\infty}
 {\displaystyle sup_{(x,y)∈D}\left|\frac{ ∂f(x,y)}{∂y }\right|=K<\infty}
を満たす。
 {\displaystyle \frac{ ∂f(x,y)}{∂y }} {\displaystyle y_1} {\displaystyle y_2}を繋ぐ線分に沿って積分することで以下の等式を得る。
 {\displaystyle f(x,y_1)-f(x,y_2)=\int_{ y_1}^{ y_2}\frac{ ∂f(x,y)}{∂y }dy}
両辺に絶対値を付けて、
 {\displaystyle |f(x,y_1)-f(x,y_2)|=\left|\int_{ y_1}^{ y_2}\frac{ ∂f(x,y)}{∂y }dy\right|}
 {\displaystyle ≦\int_{ y_1}^{ y_2}\left|\frac{ ∂f(x,y)}{∂y }\right| |dy|≦{\int_{ y_1}^{ y_2}K|dy|}=K|y_2-y_1|}
従って、 {\displaystyle f} {\displaystyle D}上でリプシッツ条件を満たす。
 {\displaystyle |f(x,y_1)-f(x,y_2)|≦K|y_1-y_2|}
ゆえに、実数値函数の時と同じように、 {\displaystyle h=min\{a,\frac{ b}{M }\}}とすると条件1'のもと {\displaystyle |x-x_0|≦h}微分方程式 {\displaystyle dy/dx=f(x,y)}逐次近似法を適用することが出来る。
 {\displaystyle |x-x_0|≦h} {\displaystyle x_0} {\displaystyle x}を繋ぐ滑らかな曲線に沿って複素積分する時、以下のように書ける。
 {\displaystyle y_1(x)=y_0+\int_{ x_0}^{x }f(t,y(t))dt}
 {\displaystyle y_2(x)=y_0+\int_{ x_0}^{x }f(t,y_1(t))dt}

 {\displaystyle y_n(x)=y_0+\int_{ x_0}^{x }f(t,y_{n-1}(t))dt}
 {\displaystyle f(x,y_0)} {\displaystyle |x-x_0|<h}で正則だから、最初の積分はwell-definedであり、曲線に依らず、それゆえ、{\displaystyle y_1(x)}もまたそうである。
最初の積分を取ると {\displaystyle y_1(x)-y_0=\int_{ x_0}^{x }f(t,y_0)dt}だから、両辺に絶対値を付けて
 {\displaystyle |y_1(x)-y_0|=\left|\int_{ x_0}^{x }f(t,y_0)dt\right|≦\int_{ x_0}^{x }|f(t,y_0)||dt|}
 {\displaystyle ≦\int_{x_0}^{x}M|dt|≦M|x-x_0|<hM≦\frac{ b}{ M}M=b}
よって {\displaystyle f(x,y_1(x))} {\displaystyle |x-x_0|<h≦a} {\displaystyle x}函数としてwell-definedである。
{\displaystyle y_1(x)}が正則函数{\displaystyle f(x,y_0)}積分により与えられることから、{\displaystyle y_1(x)}{\displaystyle |x-x_0|<h}で正則である。従って、2つ目の積分{\displaystyle \int_{x_0}^{x}f(t,y_1(t))dt}はwell-definedであり、{\displaystyle y_2(x)}{\displaystyle |x-x_0|<h}においてwell-definedかつ正則である。{\displaystyle x_0}{\displaystyle x}を繋ぐ線分に沿って積分すると、
{\displaystyle |y_2(x)-y_0|≦ \left| \int_{x_0}^{x} f(t,y_1(t))dt \right|≦ \int_{x_0}^{x}|f(t,y_1(t))||dt|}
{\displaystyle ≦\int_{x_0}^{x}M|dt|≦M|x-x_0|<hM≦b}
このようにして{\displaystyle |x-x_0|<h}{\displaystyle y_3(x)}{\displaystyle y_4(x)}{\displaystyle y_5(x)}、… を次々と定義することができる。
実際、上の事実から簡単にわかるように{\displaystyle y_k(x)}{\displaystyle |x-x_0|<h}でwell-definedかつ正則と仮定すると{\displaystyle |y_{k+1}(x)-y_0|<b}となり{\displaystyle y_{k+1}(x)}{\displaystyle |x-x_0|<h}でwell-definedである。よって、函数{\displaystyle y_n(x)} {\displaystyle (n∈\mathbb{N}\setminus \{0\})}{\displaystyle |x-x_0|<h}で正則かつ{\displaystyle |y_n(x)-y_0|<b}
{\displaystyle x_0}{\displaystyle x}を繋ぐ線分に沿った積分を取ることと、微分方程式メモ (1)と同様の計算により、正則函数{\displaystyle {(y_n(x))}_{n∈\mathbb{N}}}{\displaystyle |x-x_0|<h}での一様収束性と、{\displaystyle y(x_0)=y_0}{\displaystyle \frac{dy}{dx}=f(x,y)}を満たす極限函数{\displaystyle y(x)}が示せる。更に、正則函数列の一様極限{\displaystyle y(x)}もまた正則である。
解の一意性は実数値函数の時と同様に証明される。

微分方程式メモ (3)

今回は{\displaystyle n}次近似解の誤差評価について。
微分方程式メモ(1)で得た不等式
{\displaystyle |y_m(x)-y_n(x)|≦b\sum_{k=n}^{m-1}\frac{{(Kh)}^k}{k!}}
{\displaystyle m \to \infty}として、区間{\displaystyle |x-x_0|≦h}
{\displaystyle |y(x)-y_n(x)|≦b\sum_{k=n}^{\infty}\frac{{(Kh)}^k}{k!}}
を得る。この不等式は{\displaystyle n}次近似解{\displaystyle y_n(x)}の誤差評価となっている。しかしこの評価法では何度も積分の評価を繰り返す必要があり、いつも実用的な方法であるとは限らない。
別のやり方を考えてみよう。{\displaystyle f(x,y)}の近似{\displaystyle g(x,y)}を初期条件{\displaystyle z(x_0)=y_0}を満たす区間{\displaystyle |x-x_0|≦h}上で微分方程式{\displaystyle \frac{dz}{dx}=g(x,y)}の解{\displaystyle z(x)}を見つけることができるようなものであるとする。正数{\displaystyle ε}{\displaystyle sup_{(x,y)∈D}|f(x,y)-g(x,y)|≦ε}を満たすとする。そして{\displaystyle y(x)}を初期条件{\displaystyle y(x_0)=y_0}を満たす{\displaystyle |x-x_0|≦h}における{\displaystyle \frac{dy}{dx}=g(x,y)}のuniqueな解とする。この時、
{\displaystyle |y(x)-z(x)|=\left|\int_{x_0}^{x}f(t,y(t))dt-\int_{x_0}^{x}g(t,z(t))dt\right|=\left|\int_{x_0}^{x}f(t,y(t))-g(t,z(t))dt\right|}
リプシッツ条件より以下の不等式が導かれる。
{\displaystyle |y(x)-z(x)|=\left|\int_{x_0}^{x}f(t,y(t))-g(t,z(t))dt\right|}
{\displaystyle =\left|\int_{x_0}^{x}f(t,y(t))-f(t,z(t))+f(t,z(t))-g(t,z(t))dt\right|}
{\displaystyle =\left|\int_{x_0}^{x}f(t,y(t))-f(t,z(t))dt+\int_{x_0}^{x}f(t,z(t))-g(t,z(t))dt\right|}
{\displaystyle =\left|\int_{x_0}^{x}f(t,y(t))-f(t,z(t))dt+\int_{x_0}^{x}f(t,z(t))-g(t,z(t))dt\right|}
{\displaystyle ≦\left|\int_{x_0}^{x}f(t,y(t))-f(t,z(t))dt\right|+\left|\int_{x_0}^{x}f(t,z(t))-g(t,z(t))dt\right|}
{\displaystyle ≦\left|\int_{x_0}^{x}|f(t,y(t))-f(t,z(t))|dt\right|+\left|\int_{x_0}^{x}|f(t,z(t))-g(t,z(t))|dt\right|}
{\displaystyle ≦|ε|x-x_0||+\left|\int_{x_0}^{x}K|y(t)-z(t)|dt\right|}
{\displaystyle =ε|x-x_0|+K\left|\int_{x_0}^{x}|y(t)-z(t)|dt\right|}
ゆえに、{\displaystyle L=sup_{|x-x_0|≦h}|y(x)-z(x)|}とおくと、
{\displaystyle |y(x)-z(x)|≦ε|x-x_0|+K\left|\int_{x_0}^{x}|y(t)-z(t)|dt\right|}
{\displaystyle ≦ε|x-x_0|+KL|x-x_0|}
上の不等式{\displaystyle |y(x)-z(x)|≦ε|x-x_0|+K\left|\int_{x_0}^{x}|y(t)-z(t)|dt\right|}の右辺の{\displaystyle |y(t)-z(t)|}をこの不等式で評価すると、
{\displaystyle |y(x)-z(x)|≦ε|x-x_0|+K\left|\int_{x_0}^{x}|y(t)-z(t)|dt\right|}
{\displaystyle ≦ε|x-x_0|+K\left|\int_{x_0}^{x}ε|t-x_0|+KL|t-x_0|dt\right|}
{\displaystyle ≦ε|x-x_0|+K\left|\frac{ε{|x-x_0|}^2}{2}+\frac{KL{|x-x_0|}^2}{2}\right|}
{\displaystyle ≦ε|x-x_0|+\frac{Kε{|x-x_0|}^2}{2}+\frac{K^2L{|x-x_0|}^2}{2}}
ここから紆余曲折あって{\displaystyle |x-x_0|≦h}上で任意の{\displaystyle n∈\mathbb{N}\setminus\{0\}}に対し
{\displaystyle |y(x)-z(x)|≦\frac{L{(K|x-x_0|)}^n}{n!}+ε\sum_{m=1}^{n}\frac{K^{m-1}{|x-x_0|}^m}{m!}}
であることが言える。
この不等式の右辺を{\displaystyle n\to\infty}とすれば、第1項は{\displaystyle 0}に一様収束し、第2項は{\displaystyle ε\frac{e^{K|x-x_0|}-1}{K}}より小さくなる。
実際、
{\displaystyle ε\sum_{m=1}^{n}\frac{K^{m-1}{|x-x_0|}^m}{m!}=\frac{ε}{K}\sum_{m=1}^{n}\frac{{(K|x-x_0|)}^m}{m!}}
{\displaystyle =\frac{ε}{K}\left(\sum_{m=0}^{n}\frac{{(K|x-x_0|)}^m}{m!}-1\right)}
{\displaystyle =\frac{ε}{K}\left(\sum_{m=0}^{\infty}\frac{{(K|x-x_0|)}^m}{m!}-1-\sum_{l=n+1}^{\infty}\frac{{(K|x-x_0|)}^l}{l!}\right)}
{\displaystyle =\frac{ε}{K}\left(e^{K|x-x_0|}-1-\sum_{l=n+1}^{\infty}\frac{{(K|x-x_0|)}^l}{l!}\right)}
{\displaystyle ≦ε\frac{e^{K|x-x_0|}-1}{K}}
よって、{\displaystyle |x-x_0|≦h}での近似解{\displaystyle z(x)}の誤差評価は以下の不等式で与えられる。
{\displaystyle |y(x)-z(x)|≦ε\frac{e^{K|x-x_0|}-1}{K}}

次回は積分定数について書く予定だが数式を打ち込むのに疲れてきたので飛ばすかもしれない。

微分方程式メモ (2)

予告した通り今回は解の一意性について書く。まだ1日も経っていないがしばらく数式を打ち込んでいられる余裕も無さそうだから早めに投稿した。あくまでもメモであって、人に見せることは考えずに書いているので注意。

逐次近似法により{\displaystyle y(x_0)=y_0}を満足する{\displaystyle dy/dx=f(x,y)}の解{\displaystyle y(x)}を得た。しかし、{\displaystyle dy/dx=f(x,y)}の解の一意性についてまだ確かめていない。同じ初期条件を満たす別の解がある可能性が残っているのだ。
前回のメモで設定した以下の2つの条件の下、一意性を証明する。
条件1:函数{ \displaystyle f(x,y)}は実数値で、{ \displaystyle |x-x_0|≦a}{ \displaystyle |y-y_0|≦b} { \displaystyle (a,b>0)}で定義される{ \displaystyle (x,y)}平面の領域{ \displaystyle D}で連続である。
条件2:{ \displaystyle f(x,y)}{ \displaystyle D}{ \displaystyle y}に関してリプシッツ条件を満たす。つまり、正定数{ \displaystyle K}が存在し{ \displaystyle D}の任意の点の組{ \displaystyle (x_1,y_1)}{ \displaystyle (x_2,y_2)}に対し
{ \displaystyle |f(x_1,y_1)-f(x_2,y_2)|≦K|y_1-y_2|}
が成り立つ。
[証明]
{\displaystyle z(x)}{\displaystyle z(x_0)=y_0}{\displaystyle z(x)=y_0+\int_{x_0}^{x}f(t,z(t))dt}を満たす{\displaystyle dy/dx=f(x,y)}の解とする。
条件2より、
{\displaystyle |y(x)-z(x)|=\left|y_0+\int_{x_0}^{x}f(t,y(t))dt-y_0-\int_{x_0}^{x}f(t,z(x))dt\right|}
{\displaystyle =\left|\int_{x_0}^{x}f(t,y(t))dt-\int_{x_0}^{x}f(t,z(x))dt\right|}{\displaystyle =\left|\int_{x_0}^{x}f(t,y(t))dt-f(t,z(x))dt\right|}
{\displaystyle ≦\left|\int_{x_0}^{x}K|y(t)-z(t)|dt\right|=K\left|\int_{x_0}^{x}|y(t)-z(t)|dt\right|}
ここで{\displaystyle N=sup_{|x-x_0|≦h}|y(x)-z(x)|}とおくと、{\displaystyle |x-x_0|≦h}
{\displaystyle |y(x)-z(x)|≦KN|x-x_0|}
この不等式で{\displaystyle |y(x)-z(x)|≦K\left|\int_{x_0}^{x}|y(t)-z(t)|dt\right|}の右辺の{\displaystyle |y(t)-z(t)|}を評価すると、
{\displaystyle |y(x)-z(x)|≦K\left|\int_{x_0}^{x}|y(t)-z(t)|dt\right|≦K\left|\int_{x_0}^{x}KN|t-x_0| dt\right|}
{\displaystyle =K^{2}N\left|\int_{x_0}^{x}|t-x_0|dt\right|=K^{2}N\frac{{|x-x_0|}^{2}}{2}≦\frac{N(Kh)^{2}}{2}}
さて、{\displaystyle |y(x)-z(x)|≦\frac{N(K|x-x_0|)^{n-1}}{(n-1)!}}であるとすれば
{\displaystyle |y(x)-z(x)|≦K\left|\int_{x_0}^{x}|y(t)-z(t)|dt\right|≦K\left|\int_{x_0}^{x}\frac{N(K|t-x_0|)^{n-1}}{(n-1)!}dt\right|}
{\displaystyle =K^{n}N\left|\int_{x_0}^{x}\frac{{|t-x_0|}^{n-1}}{(n-1)!}dt\right|≦K^{n}N\frac{{|x-x_0|}^{n}}{n!}}
{\displaystyle =\frac{N{(K|x-x_0|)}^{n}}{n!}≦\frac{N{(Kh)}^{n}}{n!}}
よって任意の{\displaystyle m}に対し{\displaystyle |y(x)-z(x)|≦\frac{N{(Kh)}^{m}}{m!}}が成立。
右辺は{\displaystyle x}の選び方に依らないので{\displaystyle N≦\frac{N{(Kh)}^{m}}{m!}}が言える。しかし{\displaystyle \frac{{(Kh)}^{m}}{m!}}{\displaystyle m}を大きくしていくと{\displaystyle 1}より真に小さくなり、{\displaystyle N=0}でなければこの不等式は成り立たない。
{\displaystyle |y(x)-z(x)|≦N=0}より{\displaystyle y(x)=z(x)}であるから、解は一意的である。証明終。

逐次近似法の手順を説明するため、ひとつ例を見てみよう。
初期条件{\displaystyle y(0)=1}の下で、{\displaystyle \frac{dy}{dx}=y(x)}を解く。前回のメモと同じようにして函数{\displaystyle {(y_n(x))}_{n∈ \bf N}}を定義する:
{\displaystyle y_0(x)=y_0=1}
{\displaystyle y_1(x)=y_0+\int_{x_0}^{x}f(t,y_0)dt=1+\int_{0}^{x}1dt=1+x}
{\displaystyle y_2(x)=y_0+\int_{x_0}^{x}f(t,y_1(t))dt=1+\int_{0}^{x}1+tdt=1+x+\frac{x^2}{2}}
{\displaystyle y_3(x)=y_0+\int_{x_0}^{x}f(t,y_2(t))dt=1+\int_{0}^{x}1+t+\frac{t^2}{2}dt=1+x+\frac{x^2}{2}+\frac{x^3}{6}}

以上から{\displaystyle y_n(x)=\sum_{k=0}^{n}\frac{x^k}{k!}}と予想できる。{\displaystyle n=1}の時は成立している。
{\displaystyle y_{n-1}(x)=\sum_{k=0}^{n-1}\frac{x^k}{k!}}と仮定すると、
{\displaystyle y_n(x)=1+\int_{0}^{x}\sum_{k=0}^{n-1}\frac{t^k}{k!}dt=1+\sum_{k=0}^{n-1}\int_{0}^{x}\frac{t^k}{k!}dt}
{\displaystyle =1+\sum_{k=1}^{n}\int_{0}^{x}\frac{t^{k-1}}{(k-1)!}dt=1+\sum_{k=1}^{n}\frac{x^k}{k!}=\sum_{k=0}^{n}\frac{x^k}{k!}}
従って、先程の予想は正しい。
微分方程式{\displaystyle dy/dx=y(x)}の解{\displaystyle \lim_{n \to \infty}y_n(x)=y(x)}は、
{\displaystyle \lim_{n \to \infty}y_n(x)=\lim_{n \to \infty}\sum_{k=0}^{n}\frac{x^k}{k!}=\sum_{k=0}^{\infty}\frac{x^k}{k!}}
こうして{\displaystyle y(x)=exp(x):=e^x}が導かれた。

次回は{\displaystyle n}次近似解{\displaystyle y_n(x)}の誤差評価について書く予定。

微分方程式メモ (1)

微分方程式についてのメモ。参考文献は Lectures on differential and integral equations (Kosaku Yoshida) である。TeXコマンドはよくわからないので見づらいのは許して欲しい。
さて、1階常微分方程式はふつう{ \displaystyle F(x,y,dy/dx)=0}の形で書かれる。以下、これが{ \displaystyle \frac{dy}{dx}}について解くことができ、{ \displaystyle \frac{dy}{dx} =f(x,y)} の形で書かれる場合について考える。{ \displaystyle \frac{dy}{dx} =f(x)}というのが最も単純な場合であるが、この解は{ \displaystyle f(x)} が連続な変域において
{ \displaystyle y(x) =\int_{x_0}^{x}f(t) dt + C}
で与えられる。積分定数{ \displaystyle C}{ \displaystyle x=x_0}における{ \displaystyle y(x)}の値により定まる。すなわち{ \displaystyle y=y(x_0)=C}である。つまり、{ \displaystyle y(x_0)=y_0}を満たす{ \displaystyle \frac{dy}{dx} =f(x)}の解は
{ \displaystyle y(x) = y_0+\int_{x_0}^{x}f(t) dt}
で与えられる。条件{ \displaystyle y(x_0)=y_0}は初期条件と呼ばれる。
{ \displaystyle y(x_0)=y_0}を満たす微分方程式{ \displaystyle \frac{dy}{dx} =f(x,y)}の一般解を見つけたいのであるが、この問題を形式化するため、{ \displaystyle f(x,y)}に関して2つの条件を設定する。
条件1:函数{ \displaystyle f(x,y)}は実数値で、{ \displaystyle |x-x_0|≦a}{ \displaystyle |y-y_0|≦b} { \displaystyle (a,b>0)}で定義される{ \displaystyle (x,y)}平面の領域{ \displaystyle D}で連続である。
条件2:{ \displaystyle f(x,y)}{ \displaystyle D}{ \displaystyle y}に関してリプシッツ条件を満たす。つまり、正定数{ \displaystyle K}が存在し{ \displaystyle D}の任意の点の組{ \displaystyle (x_1,y_1)}{ \displaystyle (x_2,y_2)}に対し
{ \displaystyle |f(x_1,y_1)-f(x_2,y_2)|≦K|y_1-y_2|}
が成り立つ。
ここで、{ \displaystyle f(x,y)}{ \displaystyle D}において連続な偏導関数{ \displaystyle \frac{∂f(x,y)}{∂y}}を持つ時、{ \displaystyle f(x,y)}が条件2を満たすことを見てみよう。
{ \displaystyle \left| \frac{∂f(x,y)}{∂y} \right|}は連続で、{ \displaystyle D}有界閉集合であることより{ \displaystyle \left| \frac{∂f(x,y)}{∂y} \right|}有界。よって、{ \displaystyle K= sup_{(x,y)∈D}\left| \frac{∂f(x,y)}{∂y} \right|}とおける。ここで、{ \displaystyle x}を固定し、{ \displaystyle f_{(x)}(y)=f(x,y)}とすると、{ \displaystyle \frac{df_{(x)}(y)}{dy}= \frac{∂f(x,y)}{∂y}}である。{ \displaystyle (x,y_1)、(x,y_2)∈D} に対し平均値の定理より、ある{ \displaystyle \theta∈(y_1,y_2)}が存在し、
{ \displaystyle \frac{f_{(x)}(y_1)-f_{(x)}(y_2)}{y_1-y_2}=\left( \frac{df_{(x)}}{dy} \right) (\theta)}
が成立。従って、
{ \displaystyle \frac{f(x,y_1)-f(x,y_2)}{y_1-y_2}= \frac{∂f}{∂y} (x,\theta)}
両辺に絶対値を付けて
{ \displaystyle \left| \frac{f(x,y_1)-f(x,y_2)}{y_1-y_2} \right| = \left| \frac{∂f}{∂y} (x,\theta) \right| }
{ \displaystyle K= sup_{(x,y)∈D}\left| \frac{∂f(x,y)}{∂y} \right|}より、
{ \displaystyle \left| \frac{f(x,y_1)-f(x,y_2)}{y_1-y_2} \right| ≦ K }
故に、{ \displaystyle |f(x,y_1)-f(x,y_2)| ≦ K|y_1-y_2|}が導かれる。{ \displaystyle x}は任意であるから、{ \displaystyle f(x,y)}はリプシッツ条件を満たす。これで条件2の重要性がわかったかと思われる。
条件1より、{ \displaystyle |f(x,y)|}有界閉領域{ \displaystyle D}上で連続であるから、{ \displaystyle |f(x,y)|}{ \displaystyle D}有界である。よって、{ \displaystyle M= sup_{(x,y)∈D} |f(x,y)|}とおける。{ \displaystyle h=min\{a,\frac{b}{M}}\}とすると、区間{ \displaystyle |x-x_0|≦h}上で函数{ \displaystyle {(y_{n}(x))}_{n∈\bf N}}を以下のように定義することができる:
{ \displaystyle y_0(x)=y_0}
{ \displaystyle y_1(x)=y_0+\int_{x_0}^{x}f(t,y_0(t)) dt}
{ \displaystyle y_2(x)=y_0+\int_{x_0}^{x}f(t,y_1(t)) dt}

{ \displaystyle y_n(x)=y_0+\int_{x_0}^{x}f(t,y_{n-1}(t)) dt}

定理:{ \displaystyle {(y_n(x))}_{n∈\bf N}}は区間{ \displaystyle |x-x_0|≦h}において一様収束し、その極限{ \displaystyle y(x)}は初期条件{ \displaystyle y(x_0)=y_0}を満たす{ \displaystyle dy/dx=f(x,y)}の解である。
[証明]
{ \displaystyle M= sup_{(x,y)∈D} |f(x,y)|< \infty}{ \displaystyle h=min\{a,b/M\}}より、{ \displaystyle |x-x_0|≦h}で、{ \displaystyle k=1,2,…,n}に対し
{ \displaystyle |y_k(x)-y_0|=\left| \int_{x_0}^{x}f(t,y_{k-1}(t)) dt \right|≦|x-x_0|sup_{(x,y)∈D}|f(x,y)|≦hM}
また、{ \displaystyle h}の定義より{ \displaystyle hM≦b}がわかる。
従って、{ \displaystyle k=1,2,…,n}に対し{ \displaystyle |y_k(x)-y_0|≦hM≦b}が成立。
ここで、リプシッツ条件を用いる。
{ \displaystyle |f(t,y_k(t))-f(t,y_{k-1}(t))| ≦ K|y_k(t)-y_{k-1}(t)|}
左辺の絶対値は外せる。
{ \displaystyle f(t,y_k(t))-f(t,y_{k-1}(t)) ≦ K|y_k(t)-y_{k-1}(t)|}
両辺{ \displaystyle t}について積分すると、
{ \displaystyle \int_{x_0}^{x}f(t,y_k(t))-f(t,y_{k-1}(t)) dt ≦ \int_{x_0}^{x}K|y_k(t)-y_{k-1}(t)| dt}
{ \displaystyle \int_{x_0}^{x}f(t,y_k(t)) dt - \int_{x_0}^{x}f(t,y_{k-1}(t)) dt ≦ K \int_{x_0}^{x}|y_k(t)-y_{k-1}(t)| dt}
{ \displaystyle \int_{x_0}^{x}f(t,y_k(t)) dt + y_0 - y_0 - \int_{x_0}^{x}f(t,y_{k-1}(t)) dt ≦ K \int_{x_0}^{x}|y_k(t)-y_{k-1}(t)| dt}
{ \displaystyle y_{k+1}(x)-y_{k}(x) ≦ K \int_{x_0}^{x}|y_k(t)-y_{k-1}(t)| dt}
両辺絶対値を付けて、
{ \displaystyle |y_{k+1}(x)-y_{k}(x)| ≦ K \left| \int_{x_0}^{x}|y_k(t)-y_{k-1}(t)| dt \right|}
この不等式を認めれば、{ \displaystyle k=1,2,…,n}
{ \displaystyle |y_{k}(x)-y_{k-1}(x)| ≦ \frac{b{(K|x-x_0|)}^{k-1}}{(k-1)!}}
が導かれる。{ \displaystyle k=1}の時は明らかであるから、{ \displaystyle k=n}で上の不等式が成り立つと仮定すると、{ \displaystyle k=n+1}でも
{ \displaystyle |y_{n+1}(x)-y_{n}(x)| ≦ \frac{b{(K|x-x_0|)}^{n}}{n!}}
が成り立つ。よって数学的帰納法より任意の{ \displaystyle k}についてこれが成り立つ。細かい証明はダルいので演習問題とする。
この時、{ \displaystyle m>n}
{ \displaystyle |y_m(x)-y_n(x)| ≦ \sum_{k=n}^{m-1}|y_{k+1}(x)-y_k(x)|}
{ \displaystyle ≦\sum_{k=n}^{m-1} \frac{b{(K|x-x_0|)}^{k}}{k!}≦\sum_{k=n}^{m-1} \frac{b{(Kh)}^{k}}{k!}}
が得られる。
{ \displaystyle |y_m(x)-y_n(x)| ≦\sum_{k=n}^{m-1} \frac{b{(Kh)}^{k}}{k!}}の右辺を{ \displaystyle n→\infty}とすると、{ \displaystyle {(y_n(x))}_{n∈\bf N}}は区間{ \displaystyle |x-x_0|≦h}函数{ \displaystyle y(x)}に一様収束することがわかる。一様収束することから、{ \displaystyle y(x)}は連続かつ初期条件{ \displaystyle y(x_0)=y_0}を満たす。
{ \displaystyle y(x)}{ \displaystyle dy/dx=f(x,y)}の解であることを示すために、この命題を用いる。
命題:函数{ \displaystyle {(y_n(x))}_{n∈\bf N}}が一様収束し、{ \displaystyle y_n(x)}が区間{ \displaystyle |x-x_0|≦h}で連続ならば、以下が成立。
{ \displaystyle \lim_{n \to \infty} \int_{x_0}^{x}y_n(t) dt = \int_{x_0}^{x} \lim_{n \to \infty}y_n(t) dt}
これもダルいので証明しない。
これを認めれば、{ \displaystyle \lim_{n \to \infty}y_n(x)=y(x)}{ \displaystyle y_0+ \int_{x_0}^{x}f(t,y(t))dt}に一致する:
{ \displaystyle \lim_{n \to \infty}y_n(x)=y_0+\lim_{n \to \infty}\int_{x_0}^{x}f(t,y_n(t))dt}
{ \displaystyle =y_0+\int_{x_0}^{x}\lim_{n \to \infty}f(t,y_n(t))dt=y_0+\int_{x_0}^{x}f(t,y(t))dt}
積分函数{ \displaystyle f(t,y(t))}は連続なので、{ \displaystyle y(x)}微分可能である。
よって、導函数{ \displaystyle dy/dx}
{ \displaystyle \frac{dy}{dx}=\frac{d}{dx}y_0+\frac{d}{dx}\int_{x_0}^{x}f(t,y(t))dt=f(x,y(x))}
となり、{ \displaystyle y(x)}{ \displaystyle dy/dx=f(x,y)}の解であることがわかる。証明終。

これ以上やるとページがクソ重くなりそうなので一旦終了。次回は解の一意性について書く。

文フリレポート

 東京流通センターに向かうモノレールの中で、僕はこれから会うであろうインターネットの人間たちのことを考えていた。人間かどうかも疑わしい連中だ。腕がガチャンと外れてウイーンと銃身を出してくるようなヤバい奴らかもしれない。本当は文学フリーマーケットなんて開催されていなくて、全てはインターネットの人間たちが僕をおびき寄せるために仕組んだ罠だったという可能性もある。大丈夫か、このまま行っていいのか。ああ、どうしよう、護身用に催涙スプレーや刃物などを持ってこなかったのが悔やまれる。なんてことだ、全部終わり、僕は東京で死ぬんだ。


 11時を少し回って適度に統合が失調してきた頃、はるしにゃんからLINEが来ているのに気付いた。12時に到着するからそれまで代わりに売り子をしてくれ、と言うのだ。売り子の経験など全く無く、非常に焦った。今モノレールに乗っているのだって偶然で、目的の本が売り切れるまでに着いたらいいやと思って適当に、所要時間などはあまり調べずに電車に乗り込んでいた。モノレールは11時14分に到着した。不安はあったが断る理由も無いので、僕の寄稿した小説「ソイネックスの降った街」が掲載されている同人誌『SOINEX』の委託先ブース(2階)に急いで向かう。鈴木真吾氏が1人で準備をしているところに合流し、未開封の段ボールから取り出したSOINEXを陳列、パイプ椅子に座り、販売を開始した。途中鈴木氏が煙草を吸いに行ったりした時などは僕一人でブースを担当する形になり、また統合が失調しそうになった。難易度が高い。
 12時過ぎにはるしにゃんが到着した。人手が足りそうな様子だったため、他のブースを回ることにした。僕は現実においてはもちろん、インターネットにおいても友達があまりいない。何を買えばいいのか全くわからない。タイムラインをザッと眺めたところセロトニン工場の『点在』という本が目に付いた。処女ちゃんの小説が載っているらしいのでとりあえずこれを買うことにした。ブース(1階)を見たところフォロー/フォロワー外の人、ブロックしていた人(念のため東京に来る前に解除しておいた)など、会話し辛い人たちしかいない様子だった。僕は彼らとあまり目を合わせないようにして急いで点在を購入した。インターネットというものは本当に難しい。ここは確かに現実の空間だが、同時にインターネットでもあるのだ。
 タイムラインを眺めては流れてきた本を買いに行くというのを繰り返していると、遅刻していたらしい処女ちゃんの「会場に着いた」というツイートが流れてきた。再度セロトニン工場のブースを訪れると、ドシンドシンという重低音と共に僕の名を呼ぶ女の声がした。突然目の前にデカい女が出現して処女ちゃんと名乗った。敷き布団にしたら良さそうな感じだった。複素数太郎とデートすると言い始めたので適当に敷き布団に付いて行くことにした。2階を回っている時に「お前がメンヘラだと言っている女の子をメンヘラにしたのはお前だ」という主旨のことを言われたが、その通りだと思う。1階に降りてデブちゃんが飲み物を買おうとしたので「あっちにヨーグリーナを売っている自販機がある」と教えたら大喜びで断層を発生させながらドスドスと買いに行った。
 デブ布団ちゃんと一通り会場を回って解散した直後、能登だでぃ子が文フリに来た。だでぃ子を探して2階エスカレータ前を多動していると、オシャレにキメて来た彼が僕に接近しながら話しかけてきた。接近しながら言葉を発する人間に即座に反応するだけの能力が無かったから3秒ほど固まってしまった。だでぃ子と会場を多動しつつ「インターネットをやって良いことなんて何も無い」という話をし、だいたいのブースを見終わった頃に「これからどうします?」「エーッ、何も決めてません、決定能力が無い」というやり取り(この後同じ流れが何度も繰り返される)をしてまたグルグルと多動した。だでぃ子はツイッターと違ってちゃんとした人間なんだなあと思っていたが、別れた後「複素数太郎が机を蹴って脅してきた」とツイートしていたので、やはりだでぃ子はだでぃ子である。
 点在が売り切れたと聞き、もう一度セロトニン工場のブースに行くことにした。敷きデブに話しかけるとまた複素数太郎とデートに行くと言うので付いて行った。少し歩いてからホール外のパイプ椅子で休憩した。速水ヤミが到着したとの情報が入り、会いに向かうことにした。速水ヤミはすぐに見つかったがどう声をかければ良いのかわからず、しばらくはただ追跡することしかできなかった。30分くらい悩んで、意を決して2人で突撃した。速水ヤミもまたオシャレで、こちらがABCマートの靴にGAPのズボン、ドギツい青と黄色のローリングストーンズTシャツの上からエスニックなサイケYシャツを着用して来たことが急に恥ずかしくなってきた。下品な大阪人っぽい。下品な大阪人だからこれで正解なんだろうけど。
 10分ほど3人で健全な話をした後、解散しはるしにゃんのところへ戻った。焼肉を食おうという話になった。1階で『Flippant Segment』を頒布していた夜空さんを誘い、5人で焼肉を食べに行った。はるしにゃんが何度も「お前の数学パワーで……」と雑な振りをしてきて困った。途中の駅で彼が「お笑い芸人になりたい」と述べていたのを思い出しながら「複素数太郎のために一発芸を考えた」と言ってよくわからない動きをして「フクソヘイメンーッ」と言うのを見たりしたが、なかなか辛い。
 
 購入した十数冊の本でズッシリと重くなったリュックを背負い、焼肉屋を出て、総武線に乗って宿泊先に帰った。翌日の午前中にスカイツリー周辺をウロウロしたが、17:30から18:00入場の整理券が配られていたので登るのは諦めた。新大阪へと向かう新幹線は16:10に発車する。大量の人間が巨大な鉄の塔に吸い込まれていく様子に現実感は全く無く、東京ではSOINEX NIGHTと文フリだけがリアリティを帯びて僕の記憶の一部に組み込まれた。
 
 そろそろここを出なければ新幹線に間に合わない。大阪に帰るか。