パソコンはまだ売っていますかね

 朝6時に絶叫しながら飛び起きた。マジかよ。寝たのは3時ごろじゃなかったか。確かに普段から絶叫しながら飛び起きているが、しかしこんなにも質の悪い目覚めは初めてだ。気持ち悪い。心臓がヤバい音を立てている。

 ということが今朝に――というかもう昨日の朝になってしまったが――あって、あまりにも衝撃的な(そして不愉快な)夢だったので忘れないうちに書き留めておくことにする。

 

 電車の中。あの、たいへん不快な息苦しさはたぶん、大阪市営地下鉄だろうと思う。僕は赤い座席に座っていて、左側には男が、右側には女が座っているのを視界の端で確認していた。男のほうは、大抵の成人男性がそうであるように、僕より体格が良いらしい。少し汚れたセンスのない服を着ている。女は中年だ。姿を見なくとも、なんとなく「あまり関わりたくないタイプのババア」であることがわかった。僕はあまり関わりたくないタイプのババアが嫌いだ。あまり関わりたくない。

 しばらく不審な挙動をしていると、隣の男が声をかけてきた。

「パソコンはまだ売っていますかね」

 ――その異様な発音と抑揚に驚き、視線を左へちらりと移すと、そこにはこの世のものとは思えぬ異形の姿があった! 吐き気を催す極めて不安定なパーツの配置、醜く落ち窪んだ眼、そして強く憎悪を掻き立てるそのみすぼらしい表情! ああ、なんということだ! ここまでに悍ましい生き物が、忌むべき存在が、ここに在ることを許されているとでも言うのだろうか? 彼の冒涜的なフォルムを受け入れられる人間が世界にどれほどいるのだろうか。だがこの車両内でこの男に対しある種の感情を覚えている者は、驚くべきことに、ただのひとりもいないのである。僕は一瞬にして嘔吐寸前のところまでダメージを受けたが、いや、ここは公共交通機関だ、と懸命に耐え、男のほうを見ないようにした。

「パソコンはまだ売っていますかね」

 また男が話しかけてきた。パソコンなんてそこらの電気店で売っているだろう。こいつは何を聞いているんだ? くらくらしながら横目で彼を見ると、その手には2丁の拳銃が握られていた。更に左隣の空席にも、拳銃が1丁あった。頭をゆらりゆらりと一定の周期で揺らしながら、異形の男は引き金をカチャカチャと触っていた。僕は咄嗟に大声を出し、男の手から拳銃を

 

 いや、こう文字に起こしてみると、なかなかこの気持ち悪さは伝わらないな。