ブルーベリーの木

 とある村に、欠伸をする村人の開けた大口にブルーベリーをねじ込む男がいた。そのねじ込みがあまりに敏速であったため、誰も己の口内にブルーベリーが入るのを防ぐことができなかったという。最初の数年は、食糧不足もあったため、皆これを歓迎した。

 やがて農業が発達し、有無を言わさずブルーベリーをねじ込む彼は悪魔と呼ばれるようになった。村の人々から忌み嫌われる存在となったのだ。記録に残っている間、彼は一日も休むことなく、欠伸をする村人を探しては瞬く間に口の中へとブルーベリーをねじ込んだ。

 しかしある日、ブルーベリーねじ込みおじさんは村の権力者たちの卑怯な策略によって、五十数年の生涯に幕を閉じた。ブルーベリーねじ込みおじさんの死を悲しむ者は誰一人いなかった。遺体は極めて粗雑に扱われ、そのままの姿で埋められた。

 翌年、彼の消えた村には一本のブルーベリーの木が伸びていた。それの地面に根を張る様は村のどんな屈強な男も見惚れるほど力強く、まるでブルーベリーねじ込みおじさんの広大無辺の愛と勇気を称えているようであった。