ひとなぐりこけし

完全な球体と屋根の上に降り積もる女の子のやわらかい死体

完全な球体と屋根の上に降り積もる女の子のやわらかい死体

 急にクソでかい不安が襲ってきた。僕はうまくやれてる。大きな失敗はしていない。していないはず。ひとつずつなら大丈夫だ。ひとつずつこなしていけば……。不安がある。とにかく不安がある。最近はいろいろな変化があったから、身体か精神のどちらかが適応していないのかもしれない。身体と精神は分離して考えてよいものなのだろうか。どちらとも言えると思う。

 さて、変化について書こう。とにかくどこかに吐き出したい。1月から教習所に通い始めた。これがいちばんのストレス要因だ。教習所にはなかなか行けていない。とにかく、ここはアカデミアと違いすぎる。いつも不愉快なことが、なにかひとつは起こる。この前は1ヵ月ぶりに教習車に乗り、カーブを曲がることができるようになった。このペースだと免許は取れそうにない。夏までになんとかする必要がある。今は大学院への入学準備で忙しい。これは仕方ないことなのかもしれない。

 3月から書店バイトを始めた。生まれて初めて履歴書を書いたのだが、最初のその一枚きりで、あっという間にバイト先が決まってしまった。書店バイトは人気の職種らしい。僕が採用されたがために落ちた人もいるのかもしれない。覚えることはたくさんある。他の店員が僕を指して覚えが早いと言っているのを聞いた気がする。妄想かもしれない。言葉遣いは新人の中でいちばんよいと言われた。しかし、どうだろう。よく考えてみれば僕はもうすぐ(今月の23日で)22歳だ。ふつうの学生で、浪人も留年もしていないなら就職する年齢だ。僕はどちらもしていない。であれば、労働は、たぶんできなければならないのだろう。仕事がすこしうまくいっている、というくらいでは、あまり喜ばないほうがいいのかもしれない。かもしれない、としか言えない。いつもそうだ。世界はもっとわかりやすくなってくれ。

 いま飲んでいる薬のことも書いておく。半年くらい前からL-Tyrosineを飲んでいる。速をつけてガッとやりたいときには役立つ。残念ながら精神はあまりよくならない。買ったばかりの頃は精神もよくなっている気がしていたが、気のせいだったか、もしくは耐性がついてしまったらしい。精神をよくするため、先月あたりからDMAEを飲み始めた。そこまでの速がいらない日はDMAEだけでもじゅうぶん生活ができる。DMAEがなければ絶対にバイトなんてできなかった。こんどセントジョーンズワートとロディオラも試してみる。はやく完全な健常者になりたい。

 そうだ、いちばん大事なことをまだブログに書いていなかった。もう合格発表から半年も経ったのか。京大院の修士課程に行くことになって、入学手続は数日前に済ませてしまった。ニートにはならずに済むようだ。一応、阪大も受けていて、そちらも受かっていた。僕のような社会不適合者にとって通学時間の長さは死活問題だ(ひとり暮らしなんてできない)。府内だけですべてが済むならどれだけ精神によいことか。けれども、面接の空気がこわかったのと、僕がやりたい分野ではやっぱり京大が活発というのがあって、やめた。こういう選び方はよくないのかもしれない。バイトと両立できるのかという不安が大きい。でも、いまはこれが局所的な最適解だ。そう信じたい。学費の一部と、同人誌の印刷費を稼いだら、すべての生活を研究に捧げよう。僕は馬鹿なことをやっているのだろうか。たぶん、そうなんだろうな。そうするしかないんだ、頼むよ。

 これはもっと新しい話題だ。今月の7日から12日まで、所属している美術部の卒展があった。僕の絵は、ツイッターでやっている放言みたいなものばかりだ。デッサンもクロッキーも真面目にやっている。それを一枚の絵として完成させるのが苦手だ。油絵は高校1年生のときから描いているが、まったく上達していない。絵を描くのに向いていないのかもしれない。家にあったダンボールに百均の水彩絵具で気持ちの悪い絵を描いたものを展示した。「完全な球体と屋根の上に降り積もる女の子のやわらかい死体」というタイトルで、キャプションには「その日、空には3体の天皇クローンが浮かんでいた。それが終わりの合図であることをみんな知っていたが、僕たちはただ、すべてが終わるのを見ているしかなかった。」と書いてある。意味なんてなにもない。ただのつまらない文字列だ。わざわざ展覧会に来るような人間というものは、すぐになにか意味を読み取ろうとする。だから、こうやって意地悪をしてやるんだ。みんなが空振りをしているのを見るのは楽しい。作品の意味なんてものはテクストと一緒で、作者がコントロールできるようなものじゃないんだ、とか、正しく読み取れているかではなく、とにかく読み取ることが大事なんだ、とか言われてしまうかもしれない。違うんだよ、そういうことが言いたいんじゃない。あと、デジタル作品もひとつ出したな。梅ラボみたいなやつ。インターネットっぽいやつ。業者に頼んで、A2サイズで印刷した。最終日の前日、あまりに壁面が寂しかったので作品を追加した。ギャラリーの壁に画鋲で小さならくがきをいくつか留め、ツイートを印刷した紙をテープで貼り付けた。「すべてが終わったあと、そこに残っていたのは、どろどろに溶けたインターネットアイドルの人権、社会学者だったもの、そして、おばあちゃんのビッグデータだった。さあ、ここに新しいクローゼットを置いて、たくさんおしゃれをしよう。ロボトミー手術を受けて、ふたりでしあわせになるんだ。」これも無意味だ。

 ひとつ下の学年が就活を始めている。こんなに恐ろしいこともなかなかない。みんな、どうか、どうかつぶれてしまわないでくれ。就活のことは僕にはわからない。進学するからやらなかった。僕もいつか就活をやるのだろうか。本当にやりたくない。どうしたらいいんだ。

 

 まだ眠れない。こんなものを書くんじゃなかった。もう寝よう。